超時空の夜

作家/ちいさな出版社「世瞬舎」代表 

秋はいろんな場所で出店します&近況報告

 えらいことになってます。

 

 

 10月はほぼ毎週なにかしらの地域にいます(自宅以外の地域にいるのはかなりめずらしいことです)

 

 9月25日は「文学フリマ大阪」に出店します。

 

 こちらを皮切りに、東へ西へ行ったり来たりの日々がはじまるというわけです。

 

 こうして全国の人たちと本を通じた交流が持てる、あるいは持てるはずと期待をふくらませるのはとても楽しいことです。あるいは人生でいちばん東へ西へ駆け回るひと月になるのかもしれないなぁ、と考えると、今やっているこの仕事への愛着もふたたび湧いてきます。

 健康第一で、元気に(当社比)出店できるように、体調管理には気をつけていきます。みなさまも同じように、気をつけてくださいね。

 

 

 

 

 昨日はかなり、途方もなく久しぶりにお酒を飲んで人と語らうということをやりました。私はこのとおり、18才ごろまで壁のそばにいただけのような人間ですので、ときたまそういった交流があると、なんというかよほど貴重と言いますか、この縁を大事にしていきたいなぁと深く思ったりもします。

 こうして社会における接点をつくってくれたのはなにかと、よくよく考えてみれば、それは私というよりも世瞬舎なのでは? などと考えもします。これは悪い意味にとらえる必要はなく、どんなちいさな活動でも、外の世界にふれて、開いていこうとする意思そのものが私にとって、この世瞬舎という会社になりつつあり、それが今のところ、どうやらうまくいっている面もあるようなのです。

 

 この仕事は、私が18才で働き出した初任給よりもはるかに少ない収入しかもたらしていないわけですが、不思議と、今までの人生のどの時点よりも、カタい言い方をすれば社会貢献につながっているような気がするんです。いえ、目に見えるなにかを生み出しているのでもなく、外に開こうとする意思、それは私というよりも、この出版社が担おうとしている意思そのものがすでに、それだなと感じるのでした。

 

 

 ◇

 

 

 ここ最近ふと、なにかを楽しんでいる人は素敵だなという、きっと世の人たちが何十年も前に気づいていたことにやっと気がつきました。それはとてもむずかしく、自然にできることそのものがとても貴重であるはずです。趣味を楽しんでいたり、仕事を楽しんでいたり、人と関わることを楽しんでいたり、それぞれですが、なにかひとつ持っておくと、ほんとうに救われますよね。

 

 私は外を歩いていて昆虫を観察しているときや、メダカ水槽の様子を眺めているときに「今、楽しんでいるかも……!?」と感じます。そしてこれもまた、外に開いていく作業です。世界にふれているからです。そして、ふれるたびに自分の知らなかったなにかがつかめるのです。

 ということは、楽しむ、は、知らなかったことを知る、ことが肝なのかも? 知ることが好きな私は、ちょっと強引にそんな解釈を試みました。

 

 たとえば図書館の膨大な数の本に圧倒されると同時に、これらすべてを読むことは不可能であると自覚する。まずその体験があったからかもしれません。

 この世はつまらない、と思うほどつまらないことはないです。無論、地獄のようなこの人の世だと思うことはたくさんあれど、本来において世界は膨大で、知る楽しみ、感覚する楽しみにあふれています。そして、全知全能にはなれない、図書館の本は一生かかっても読み切れない、その人間の器としての限界がまずあり、その差し引きといいますか、この器であるからこその楽しみに足るものを探すのが、楽しさを見つける秘訣なのかも、などと思います。

 全知全能の神様は、なにか楽しみを知っているのでしょうか。過去も未来も、遠くの星から指先についた埃まですべてを知っている存在がいたとすれば、それは。

 こう考えると、たくさん知っていれば知っているほどえらいとかでもないのかもしれません。

 

 もちろん、花や蝶になにかを人間的に楽しむといった感情はないのでしょうが、彼らにしか見えていない世界があります。

 たとえばうちのメダカは、たまになにもない水をパクパクしています。あれは人間の目には見えない微生物を食べている所作らしいです。

 

 その感覚器と、そのスケールでなければ、わからないものごともあるのかもしれません。

 そうであれば、人間というこの狭小な感覚器と、星の粒にも満たないちいさなスケールでさえ、虫やメダカと等価であり、巨大な恒星とも等価であるともいえます。

 もしもそれらすべて、大小を兼ねたすべてがわかる存在がいたとしても、先に書いたとおり、私たちは己の器を理解するかぎり、じゅうぶんになにかを楽しめそうな気がします。

 いつもの散歩道は、おそらく一生、毎日歩きつづけてもなにかしらの発見があります。毎日ちがう虫がいますし、かと思えばちゃっかり自分たちの根城にしている虫もいます。そのどれもが毎日ちがう発見です。

 

 虫探しでおすすめするのは、なによりもまず、どんな虫でも見つけたら喜んでみる、ということですよ。ちいさなハエでも、アブラムシでも、とりあえず発見を喜んでみて、写真を撮って種類を調べたりすると楽しいです。