超時空の夜

作家/ちいさな出版社「世瞬舎」代表 

第三話「愛してキス、恋してきゅん」の話 もしI(もしも世界から「I love you」という言葉が消えたなら)

 

『もしも世界から「I love you」という言葉が消えたなら』、通称もしIは、百瀬七海さん著、全6話の青春恋愛・短編集です。

seishunsha.thebase.in

 

↑のオンラインショップから「購入予約」ができます。到着日は、発売日当日の5月26日を予定しています。

 

【目次】

Prologue
第一話「星に願ったロマンス」 
第二話「生徒会長の悪戯な誘惑」 
第三話「愛してキス、恋してきゅん」 ▶今日はこちらご紹介します
第四話「月夜の下で抱きしめて」
第五話「いちごミルクレボリューション」
六話「たったひとつの恋

 

 体育委員の雑仕事を先生から頼まれた市原由香理は、朝一番の体育倉庫に向かいましたが、そこで告白の場面に出くわします。一年生の女の子から告白を受けていたのは、クラスメイトの高橋大地(たかはしだいち)。高橋くんのちょっと冷たそうな雰囲気が苦手な由加理。そして高橋くんは、勇気を出して告白した彼女を冷たく振ってしまい、あわてて隅っこに身を寄せた由加理は、ついでに高橋くんに見つかってしまうのでした。

 

 なるべく楽しめるために少しはしょるのですが、高橋くんから由加理への不意打ちのキス(!)で、由加理は高橋くんを意識せざるをえなくなります。彼の真意がわからないまま、物語は進んでいきつつ、由加理は徐々に高橋くんのこと、そして彼の一途な想いを知っていきます。

 

 このお話の中で、由加理の高橋くんを想う気持ちや、あるいは文中に描かれていない高橋くんの心のうち。これらはたった二日三日の出来事なのですが、このように彼らの青春におけるハイライト、きっと人生における祝福の日を、こっそり覗き見ることができるのは、不思議ですがこれもこの小説の魅力なのでしょう。

 

 由加理の鞄を奪って自転車の前かごに放り込み、後ろに乗らないなら走ってくる? とか言っちゃう高橋くんのSっ気がちょっとツボです。でもそんな彼の思い出の核心に、無邪気にも迫っていく由加理と、そのときの高橋くんの表情なども、今読み返してみるとよりわかってきて、やっぱりいとおしい二人です。